経営権の譲渡をスムーズに進めるには?金融機関出身の弁護士が解説!

  • 経営権争い

経営権とは

経営権とは、会社の経営を行う権利のことを指しますが、その権利が誰に帰属するのかはわかりづらい場合も多いです。例えば株式会社の場合では、経営を行っているのは取締役等の役員(以下「経営者」と言います。)になりますが、経営権は経営者ではなく株主にあるとされます。これは、経営者を選任する役割を持つのが株主だからです。一般的に、経営権のために必要な株式の割合は、議決権のある株式の過半数以上とされます。

経営権という言葉と似た意味の言葉として、支配権という言葉を聞いたことがある方もいらっしゃるかと思いますが、この二つの言葉の意味は異なります。支配権は、議決権のある株式のうちの3分の2以上を所有している状態のことを指します。支配権を有している場合、株主総会における特別決議を成立させることができるという点から、実質的に株式会社を支配しているため、支配権と呼ばれています。

経営権の譲渡とは

上述の通り、一般的な株式会社においては、経営権は株主にあるとされます。そのため、一般的な株式会社において経営権の譲渡を行う場合、議決権のある株式を譲渡することによって経営権の譲渡を行う場合が一般的です。この際、譲渡する株式は議決権のある株式の100%というわけではなく、34%だけ、あるいは51%だけを譲渡するという場合もあります。

経営権を譲渡するために考えるべき事項

所有する株式・議決権の効力

株式会社における決議事項は、株主総会における決議で決まります。先に述べたように、株主総会において普通決議(取締役の選任、役員報酬の決定、剰余金の配当などを決議する)の場合では議決権のある株式の過半数以上、特別決議(定款の変更、合併や株式移転の承認、特定株主に対する売渡請求などを決議する)の場合では、議決権のある株式の3分の2以上で、決議を決定することができます。例えば、3分の2以上の議決権を持つ株式を移譲することで、移譲相手は反対意見を気にせずにスムーズに経営を進めることができますが、その分外部からの意見が通らず、ワンマン経営になってしまうリスクもあります。もし経営権を複数人に移譲しようと考えている場合は、議決権割合を考慮したうえで株式を譲渡する必要があります。

株式譲渡以外の方法

経営権を譲渡するためには、株式の譲渡を行うことが一般的です。しかし経営権を譲渡せずとも、経営に関する権利を他人(他社)と所有する方法はあります。自社の現状、実現したい理想の姿にあった方法を検討しましょう。

資本提携

資本提携は、企業(法人)同士で経営権のやり取りを検討している場合にとることができる方法です。企業同士の結びつきを強くしたり、将来的なM&Aや合併などを見据えたりするために、経営権を取得しない程度に出資し合うことで強固な協力関係を築きます

業務提携

業務提携は双方の企業が存続したままで、資本の移動を伴わずに、つまり資本関係を築かずに企業が事業を共同に行います。これは、会社の経営権を譲りたくはないが、業務について他社と協力したい、という場合には有効な方法です。

事業譲渡

事業譲渡は、事業の一部を第三者に対して譲渡することを言います。事業譲渡契約の場合では、企業の持つ事業や資産の範囲を限定して譲渡することが可能になります。

このように、各企業の目指す形によって、様々な選択肢を検討することが可能です。

経営権の譲渡でよくあるトラブル

そもそも経営権の譲渡において、スムーズに譲渡が進むケースは稀です。まず双方の条件で折り合いがつかず、交渉が破綻してしまったり、当初はうまくいっていたものの、途中で双方の経営環境の変化によって頓挫してしまったり、既存従業員の扱いなどが原因でトラブルになったりすることもあります。

経営権の譲渡でよくある場合としては、事業承継、M&Aが挙げられますが、これらもトラブルが多く起こることが想定されます。

事業承継

事業承継において多くの企業が直面している問題としては、「後継者不足」が挙げられます。経営権を譲渡したくてもそもそも後継者がいない、承継相手が見つからないという問題を抱えている場合が多いのも現実です。

M&A

事業承継をしたいが後継者がいない、という場合に検討される手段のひとつとしてM&Aが挙げられます。M&Aの場合は、今までと全く異なる企業へ経営権が譲渡されるため、企業文化の違いによる社内トラブルが生じる場合が多いです。また、M&Aの場合、買収した側の企業文化に合わせるように強いられるケースが多く、合併後の社内状況や社員の働きやすい環境維持などについても、M&Aの条件設定時にしっかり交渉する必要があります。

経営権の譲渡を検討している場合は弁護士までご相談ください

経営権の譲渡を行う場合、譲渡時の条件を決めるための交渉が非常に重要になります。また、実際に経営権の譲渡が確定した場合でも、譲渡の成立までには多くの法的な準備・手続きなどが伴います。

当事務所では、M&Aに必要な法務デューデリジェンス(法務面の調査・査定)の実施のみならず、金融機関での勤務経験に基づく経営面からのアドバイスも可能です。M&Aという達成まで時間がかかる取り組みに、最後までしっかりとサポートする体制を整えております。

経営権の譲渡を検討されている方は、お気軽にご相談ください。

Last Updated on 5月 7, 2024 by hayashi-corporatelaw

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