法人破産と個人破産の違いとは?同時に進める場合のメリット、デメリットについても弁護士が解説

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法人が破産する際、代表者も連帯保証等で多額の債務を負っていることが多く、個人の資産や生活にも大きな影響が及びます。本記事では、法人破産と個人破産の違い、そして両方を同時に進めるメリット・デメリットを弁護士が解説します。

法人破産と個人破産の違いとは?

法人破産と個人破産は、どちらも債務の返済が困難になったときに利用する手続きですが、対象となる主体、目的、および効果に大きな違いがあります

法人破産とは

法人破産とは、株式会社や合同会社などの法人格を持つ企業が、支払不能または債務超過に陥った際に、裁判所を通じて会社を清算する手続きです。その目的は、法人が有する財産を換価(現金化)し、それを債権者に公平に分配することで、最終的に会社を消滅させることにあります。手続きが終了すると、法人は法的に解散した扱いとなり、同じ法人格で再起業することはできません。

個人破産とは

一方、個人破産(自己破産)は、債務を抱えた自然人(個人)が対象となり、最終的に裁判所から「免責許可決定」を得ることで、借金の返済義務を法的に帳消しにする仕組みです。個人破産の目的は、債務者個人を借金の重圧から解放し、人生を再構築する機会を与えることにあります。

法人破産と個人破産の違い

法人破産と個人破産は、以下の重要な違いがあります。

免責の有無

法人破産: そもそも免責という概念がありません。法人が消滅することによって、法人が抱えていた債務も事実上なくなります。

個人破産: 裁判所から免責許可を得ることで、借金の支払い義務が免除されます。ただし、税金など一部の非免責債権は支払い義務が残ります。

処分対象となる財産

法人破産: 会社が所有するすべての財産が処分の対象となります。

個人破産: 99万円以下の生活必需品や現金といった自由財産は、手元に残すことが認められています。

税金の扱い

法人破産: 法人そのものが消滅するため、滞納していた税金も事実上消滅します。

個人破産: 税金は非免責債権にあたるため、破産手続き後も支払い義務は残り続けます。

破産管財人の有無

法人破産: 会社の財産を現金化し、債権者に配当する必要があるため、原則として管財事件として扱われ、破産管財人が選任されます。

個人破産: 処分すべき財産がほとんどない場合は、同時廃止となり、破産管財人が選任されないケースが多くあります。

緊急性

法人破産: 債権者による財産の差し押さえや、財産の持ち出しといったリスクがあるため、機密性・慎重性・迅速性が求められます。

個人破産: 弁護士からの受任通知が債権者に送付された後、本格的に準備を進めることが一般的です。

予納金(裁判所に納める費用)の例

法人破産: 負債総額や裁判所にもよりますが、20万〜数百万円程度が目安です。

個人破産: 同時廃止か管財事件かによって異なり、数万円〜20万円以上が目安となります。

法人破産は、債権者(銀行、仕入先、得意先など)が多いことから、受任通知の送付が取り付け騒ぎや資産の持ち出しといった問題を引き起こす恐れがあるため、特に慎重に準備を進める必要があります。

法人破産の際に、経営者は個人破産をする必要があるのか

会社(法人)と代表者(個人)は、法律上は別人格として扱われます。そのため、法人が破産したからといって、代表者が自動的に会社の債務を負担したり、必ず自己破産をしなければいけないわけではありません。

個人破産をする必要があるケース

法人破産の際に、代表者が以下の状況にある場合は、個人破産(自己破産)を検討する必要があります。

代表者が法人債務の連帯保証人になっている場合

会社の借入金などを代表者が連帯保証している場合、会社が破産しても代表者の返済義務は消えません。会社の債務は高額なことが多いため、個人で返済しきれない場合は、代表者自身も自己破産を検討する必要があります。

法人と個人の資金の流れが明確に区分されていなかった場合

会社のお金と個人のお金を区別なく使っていた場合や、会社の財産を不当に処分した場合、代表者個人が損害賠償を求められることがあります。この支払いができない場合も、個人破産が必要になる可能性があります。

個人破産をする必要はないケース

代表者が法人債務の連帯保証人になっていない場合には、法人破産によって法人の債務は消滅するため、代表者個人が自己破産をする必要はありません。

法人破産と個人破産を同時に進めるメリット・デメリット

代表者が会社の連帯保証人になっている場合、法人破産と個人破産は同時に申し立てるのが一般的です。別々に手続きすることも可能ですが、同時に進めることで、手続きがスムーズになり、費用も抑えられます。 特に、会社と個人の資産の区別が曖昧な場合は、裁判所から同時に申し立てるよう求められることが多くなります。

メリット

法人破産と個人破産を同時に進める主なメリットは、費用と手続きの負担軽減です。

費用面での負担軽減

予納金の負担を軽減できる別々に申し立てると予納金もそれぞれ必要ですが、同時なら個人の予納金は官報公告費のみで済むことが多く、全体の費用負担を大きく抑えられます。

手続きの負担軽減

手続きの手間が省ける法人と個人の手続きが同じ裁判所で一本化されるため、裁判所とのやり取りなどが一度で済み、手続きの手間が大幅に軽減されます。

関連の深い法人と個人の財産状況を一元的に把握できるため、財産の仕分けがスムーズに進み、より透明で正確な手続きにつながります。

デメリット

一方で、同時申立ては、短期間に多くの対応が集中するというデメリットがあります。

スケジュールがタイトになる

迅速性が求められる法人破産に合わせ、個人の財産整理や書類準備も短期間で進める必要があり、スケジュールが非常にタイトになります。

心身の負担が大きくなる

法人と個人、両方の膨大な書類準備や財産整理を並行して行うため、心身への負担が大きくなります。特に財産関係が複雑な場合、状況の整理に多大な労力が必要です。

法人破産を検討している方は、弁護士に相談ください

会社の経営が厳しい状況になり法人破産を検討する場合、どのような手続きが必要になるか、代表者個人への影響はどうかなど、具体的な状況によって最適な判断が異なってきます。法人破産の手続きは、書類作成のボリュームが大きく、裁判所や破産管財人との対応も煩雑になるため、法律専門家である弁護士に依頼することを強くおすすめします。

林法律事務所では、法人破産に関するご相談をお受けしております。

法人破産を検討している経営者様は、ぜひ一度林法律事務所までご相談ください。

Last Updated on 11月 20, 2025 by hayashi-corporatelaw