企業の経営を進める中で、複数の取締役がいる場合には取締役の中で方針が合わない、やめてもらいたいと思うタイミングもあるのではないかと思います。
取締役の解任は、株主総会の決議によって、いつでもすることができます。ただし解任する場合に正当な理由がない場合には、多額の損害賠償請求を受ける可能性も十分にあり得ます(会社法339条)。
本コラムでは、取締役の解任の方法や、取締役の解任の手続きの流れ、リスク回避のポイント等について、経営権トラブルに強い弁護士が解説いたします。
取締役の解任の方法
そもそも取締役を変更するための方法は①退任②辞任③解任の3種類があります。
取締役の退任
任期の最後まで取締役を務めて、その後取締役の役職を継続しない場合です。
取締役の辞任
取締役が、何らかの要因で任期の途中で取締役の役職を自発的にやめる場合です。病気や突発的な事故などで勤務が難しい場合や、不祥事などのトラブルを契機とすることが多いです。
取締役の解任
株主総会の決議を行うことによって、取締役を任期の途中でやめさせる場合です。今回のように、やめさせたい、という場合にはこの方法がとられます。
退任や辞任については取締役の交代時期がコントロールできないのに対し、解任の場合は「いつでも」取締役の交代を行うことができます。そのため、どうしても取締役をやめさせたい場合には、この「解任」のための手続きを行う必要があります。なお、取締役の任期を短くしておくと、退任という方法で穏便にやめてもらうことがやりやすくなります。中小企業では取締役の任期を10年にしていることも多いので、今のうちに見直しておくことも重要です。
取締役の解任手続きの流れ
取締役の解任のためには、株主総会を開き、やめさせたい取締役の解任の決議をとる必要があります。しかし、株主総会を開くうえでも法律上の手順を守って進めなければ、のちにその解任決議が無効になる可能性もあります。
取締役の解任の手続きは、以下の流れで進めていきます
①取締役会を招集
②取締役会にて臨時株主総会の招集を決議
③臨時株主総会を招集 ※取締役会のない企業がここから
④臨時株主総会にて、取締役の解任を決議
⑤取締役の解任を登記
決議の進め方について、取締役の解任は通常の株主総会の決議と同様に「過半数の出席」と「出席株主の過半数の賛成」によって決議することができます。また、解任される取締役自身も株主となっている場合には、取締役自身も決議に参加することが認められています。
取締役解任での損害賠償
解任された取締役は、解任について「正当な理由」がある場合を除き、会社に対して、解任によって生じた損害の賠償請求が認められています(会社法339条2項)。賠償の金額については、多くの場合、もし解任されず任期を満了した場合に受け取る予定だった役員報酬金額となっています。計算方法としては「解任当時の役員報酬の月額」に「解任から任期満了までの残り月数」を掛け合わせて算出することができます。多くの場合において、高額になってしまうことが多いため、なるべく損害賠償リスクは下げておくべきです。そのためにも、「正当な理由」が何なのかを確認する必要があります。
正当な理由が認められやすい場合
取締役に任命した際の職責が果たせていない場合には、正当な理由として認められやすくなっています。例えば病気などで職務にあたれなくなった、想定していた事業の推進がうまくできていない、等の理由が考えられます。
また、企業に故意に損害を与えた場合や、重要な経営判断を誤り、企業経営全体に大きな悪影響を与えた場合などは、正当な理由として認められます。
正当な理由と認められない場合
一方で経営方針について意見が合わない、単純なミス等を理由に解任してしまった場合には、正当な理由として認められない可能性が高くなります。
弁護士に相談するメリット
上記のように、取締役の解任はどのような理由であっても、株主総会の決議によって実施することができますが、その後の損害賠償リスクの判断については、解任が「正当な理由」に基づくかどうかが重要になります。弁護士に相談することで、この「正当な理由」の判断をゆだねることができ、リスクを最小にしたうえで解任手続きを進めることができます。
取締役の解任については林法律事務所までご相談ください
企業が成長していくにつれて、取締役トラブルというのは避けられない問題です。しかし経営者の独断で判断してしまうと、後々大きなトラブルに発展しやすいトラブルでもあります。
林法律事務所では、経営権トラブルに関するご相談をお受けしております。金融機関で多くの企業の実態を見てきた経験を活かし、弁護士としての法律の知見と、ビジネスの観点から最適なご提案をいたします。ぜひお気軽にご相談ください。
Last Updated on 6月 24, 2025 by hayashi-corporatelaw