契約書作成が必要な理由
契約は、当事者の意思が合致すれば口頭で成立します。しかし、それで十分でしょうか。契約書を作成することによって、どのような契約が成立したか明確にすることができます。
特に企業間取引における契約書は、ビジネスを法的に裏付け、双方の権利義務を明確にするものです。契約書の作成や内容が不十分な場合にはトラブルが発生するリスクが大幅に増加します。そのため、契約書の作成が単なる形式的な手続きではなく、ビジネスの基盤を支えるものであることを理解する必要があります。
例えば、契約書を作成しない、あるいは口頭契約のみで取引を進めた場合、取引条件や責任の所在が不明確になり、トラブルが生じた際に裁判で争うことが難しくなります。特に、金銭に関する取り決めや納期の遅延、品質保証に関する問題など、経営に重大な影響を及ぼす事項については、契約書をしっかりと作りこむことが重要です。一方で、契約書が適切に作成されていれば、将来的な紛争を予防するだけでなく、企業間の信頼関係を強化する役割も果たします。取引先との信頼を構築し、長期的に良好な関係性を築くためには、しっかりとした契約書が不可欠です。
契約関連のよくあるトラブル
実際に企業間で発生する契約トラブルには、契約書の内容が不十分であることや、リーガルチェックが行われていないことが原因となるケースが多くあります。しかし、契約書に不備があったり、契約相手との認識の違いが生じたりすると、予期せぬトラブルが発生するリスクが高まります。特に、契約内容が曖昧であったり、企業の方針と整合していなかったりする場合、問題が複雑化し、法的な紛争に発展することもあります。ここでは、企業が直面しやすい契約トラブルについて紹介します。
契約書の不備
契約書の不備は、契約トラブルの最も一般的な原因の一つです。契約書において重要な条項が欠けていたり、条項が曖昧であったりすると、トラブルが発生する可能性が高まります。例えば、納期や支払い条件、違約金に関する具体的な取り決めが不足していると、契約当事者の間で意見が分かれる可能性があります。また、公序良俗に反するような不適切な条項が含まれている場合、その条項自体が無効とされることもあります。このような不備が原因で、紛争が発生した際に企業が法的に不利な立場に立たされ、予期せぬ損害を被るリスクが高まるため、契約書は適切に作成し、法的な確認を受けることが重要です。
契約を結ぶ相手との認識の齟齬
契約相手との認識や解釈の相違は、契約トラブルの主たる原因となり得ます。契約条項が曖昧、詳細な説明が不足しているなどの場合、双方が異なる解釈をすることが少なくありません。例えば、「納期は約2週間」と記載されていた場合、発注者は「最長で2週間」を想定していても、受注者は「おおよその目安」として捉えることがあります。このような小さな解釈の違いが原因で、納品の遅延や品質問題に発展し、双方の信頼関係が損なわれることもあります。さらに、こうした認識の齟齬が原因で法的な争いに発展することもあり、訴訟リスクが高まる可能性があります。そのため、契約書には具体的かつ明確な言葉を使用し、双方の理解を統一することが重要となります。
企業方針とマッチしていない
契約書の内容が企業方針とマッチしていない場合、内部でのトラブルや業務遂行における混乱が発生します。例えば、企業が環境保護を重視しているにもかかわらず、契約書に環境基準を満たしていない条項が含まれていた場合、企業のブランドイメージが損なわれる可能性があります。また、方針に合致しない契約を締結したことで、将来的に経営戦略に悪影響を与えることも考えられます。こうした整合性の欠如は、内部のコンプライアンス違反や経営リスクを引き起こす原因となり、場合によっては契約自体を見直す必要が生じることもあります。企業の理念や長期的なビジョンと合致した契約内容であることを確認することが大切です。
契約書作成において押さえておくべきポイント
契約書に関連するリスクを未然に防ぐためには、適切な契約書作成とリーガルチェックが不可欠です。契約書は企業を法的リスクから守るだけでなく、取引の円滑化にも寄与します。ここでは、契約書関連のトラブルを防ぐための具体的な対策について説明します。
契約書の曖昧さを排除する
契約書の条項を曖昧なまま放置してしまうと、解釈の違いによるトラブルが発生しやすくなります。例えば、「納期は約2週間」というような不明確な表現が、契約相手との認識の齟齬や紛争を引き起こす場合もあります。こうした曖昧さを排除し、具体的かつ明確な記載をすることで、双方が契約内容を正しく理解できるようにします。納期や品質保証、支払い条件などの基本的な項目に関して、詳細な記述を行い、解釈の余地を残さないことがトラブル防止の第一歩となります。特に、トラブル発生時の損害賠償や契約解除に関する条項、各条項における数値・基準を明確にすることで、将来の紛争リスクを大幅に減らすことができます。
リーガルチェックを欠かさない
契約書の作成が完了した後でも、必ずリーガルチェックを行うことが重要です。専門家によるリーガルチェックを定期的に受けることで、契約書が法的に有効であり、かつ現行法に準拠しているかを確認できます。自社の法務部門だけに頼らず、外部の弁護士や専門家に依頼することで、客観的な視点からのリスク確認が可能になります。弁護士によるリーガルチェックでは、契約書の曖昧な表現や法的な不備を、必要に応じて修正します。また、修正を怠ると企業が予期しない法的リスクにさらされることがあるため、法改正に伴った契約書の見直しが必要です。
過去のトラブル事例を参考にする
過去に他社で発生した契約トラブル事例を参考に、同様のトラブルが起こらないような契約書を作成することも、トラブルを避けるためには有効です。自社の業界における一般的な契約トラブルや、特定の取引形態におけるリスクについて対策し、同様の問題が発生しないように契約書の内容を修正すると大きなトラブルを防ぐことができます。また、契約書作成の際には業界特有のリスクを考慮し、必要な条件や対策を契約内容に反映させることで、将来的なトラブルの発生を防ぎやすくなります。自社の業界に詳しい弁護士などの専門家に依頼することで、より良い契約書を使い、契約を進めることができます。
契約書作成やリーガルチェックを弁護士に依頼するべき理由
契約書の作成が必要となった場合に、インターネットで契約書の雛形を探し、最も自社の契約内容に近しい雛形を利用する、ということもあるかと思います。確かに雛形を活用しても契約自体は成立しますが、契約書作成やリーガルチェックは、下記のような理由から弁護士への依頼がおすすめです。
実態に即した契約書が作成できる
雛形はあくまでも雛形であり、自社の業務実態に完璧に即している雛形は存在しません。そのため、細かな条文などがきっかけでトラブルになってしまう場合もあります。弁護士に契約書作成を依頼した場合、業務内容のヒアリングの上で、最も適切な契約書を作成することができます。また、契約を進めるにあたって、なるべく自社に有利にすすめることができるような項目、条件についても検討が可能です。
予防法務の観点も含めたチェックが可能
契約におけるトラブルの原因のほとんどは、契約書の内容の不備や曖昧さです。特に、契約の解釈に幅がある表現があったり、契約において重要な項目が欠けていたりすると、将来的なトラブルの要因となりえます。しかし、契約書の作成段階から弁護士という専門家が介入することによって、契約書の内容を原因としたトラブルを予防しやすくなります。
過去の判例なども含めた整合性を判断できる
弁護士は法的な専門知識を持っており、契約書が現行法に準拠しているか、法的に問題がないかを正確に確認することができます。また、過去の判例知識なども豊富にあるため、実際の契約トラブル事例をもとに、トラブルになりそうな項目や条文の修正を行ったり、業界特有の問題に関する項目を付け加えたりするなどのチア王をとることができます。
AIによる契約書チェック
AIによる契約書チェックも近年増加しています。条文に漏れがないかをチェックするには非常に有用なものです。しかし、全て必要な条項かどうかは会社によって異なりますし、相手との力関係から、法的には適切であっても譲らざるを得ない場合も多くあります。そういった場合、どこまでが必要な条文なのか、どこまで譲って良いのかなど、専門家に相談しなければ分からない部分も多くあります。
契約書作成を弁護士に依頼することで、企業は自社の法的リスクを最小限に抑え、安心して取引を進めることができるといえます。契約書の作成やリーガルチェックは、契約を問題なく進めるために最重要となるポイントです。ぜひ弁護士へのご相談をご検討ください。
まとめ
契約書は、企業間の取引を安全かつスムーズに進めるために欠かせない重要な文書です。しかし、適切に作成されていなかったり、リーガルチェックを怠ることで、予期せぬトラブルや法的紛争に発展するリスクが高まります。様々な要因による契約相手との認識の違いが企業にとって大きな損失をもたらす可能性もあるため、契約書の作成時に十分な注意を払い、弁護士によるリーガルチェックを受けることが不可欠です。また、過去のトラブル事例を活かして、自社の取引に合った契約書を作成することで、後の紛争を防ぐこともできます。
当事務所では、契約書の作成や修正、リーガルチェックを通じて、法的なリスクを未然に防ぐための適切なアドバイスを提供します。弁護士のサポートを受けることで、安心して取引を進めることができ、企業の信頼性も高まります。もし契約書の作成やリーガルチェックに不安を感じている場合は、ぜひ当事務所へご相談ください。
Last Updated on 10月 24, 2024 by hayashi-corporatelaw