「団体交渉の拒否は法的リスクが高い?拒否する場合の正当な理由について弁護士が解説」

  • 労働問題

団体交渉の要求書が届いた企業の担当者へ

団体交渉の要求書が届き、今後の対応に悩まれていませんか。会社は正当な理由なく団体交渉を拒否することは原則としてできず、誠実に対応する義務があります。対応を誤ると不当労働行為や損害賠償請求などのリスクがあるため、焦らず、まずは弁護士にご相談ください。適切な初動対応が重要です。

団体交渉を拒否するリスクとは?「不当労働行為」の法的責任

団体交渉の拒否は、正当な理由がない限り「不当労働行為」として労働組合法で禁止された違法行為です(憲法28条の団体交渉権保障)。不適切な対応は、企業に大きな法的責任と不利益をもたらします。

団体交渉の「拒否」が違法となる理由

会社には、労働組合との交渉に誠実に応じる「誠実交渉義務」が課されています(労組法7条2号)。正当な理由のない交渉拒否は、この義務に違反し、不当労働行為となります。交渉の席に着いても、誠実さに欠ける対応は拒否と同様に扱われます。

不当労働行為と認定された場合の企業側のペナルティ

不当労働行為と認定された場合、労働委員会から会社に団体交渉に応じるよう救済命令が出されます。

・救済命令への違反

命令不履行:50万円以下の過料(労組法32条)。

命令確定後の違反:1年以下の禁錮または100万円以下の罰金(刑事罰、労組法28条)。

・民事責任

団体交渉権の侵害は不法行為(民法709条)にあたり、労働組合から損害賠償請求を受けるリスクもあります。

弁護士が解説!団体交渉の「拒否」が正当と認められる3つのケース

会社は原則、団体交渉に誠実に対応する義務がありますが、正当な理由があれば拒否は許されます。理由なく拒否すれば不当労働行為となりますが、以下の特定の事情があれば拒否が認められる可能性が高いです。ただし、判断には専門知識が必要なため、自己判断は危険です。

団体交渉の当事者として不適格な場合

要求事項が、労働者の労働条件等に関わらない「任意的団交事項」である場合は、会社は交渉に応じる必要がありません。また、子会社や関連会社の従業員からの申し入れに対し、親会社に労働条件の決定権限がない場合も拒否の正当理由となります。さらに、会社側が希望する弁護士の同席を組合側が拒否したことも、団体交渉を拒否できる正当な理由となり得ます。

交渉の申入れ方法・態様が不適切な場合

労働組合側が大声で怒鳴る、机を叩く、威圧的な言動をとるなど、平和な話し合いが期待できず、参加者に危害が加えられる恐れがある状況では、会社は拒否する正当な理由があるとされます。まずは組合に抗議・誓約を求め、安全が確認されるまで交渉に応じない対応が考えられます。

すでに交渉を終結していると認められる場合

すでに誠意をもって交渉を重ね、お互いの主張や提案を出し尽くした結果、双方が平行線でこれ以上進展が期待できない状態に至った場合は、団体交渉を打ち切ることが可能です。この場合は、労働審判や裁判への移行が望ましいとされます。また、不当解雇などについてすでに裁判で決着が確定した問題を議題とする団体交渉の申入れも、拒否する正当な理由となります。

違法な「不当労働行為」とならないための企業側交渉術と注意点

会社は原則として団体交渉を拒否できません。正当な理由なく拒否したり、不誠実な態度をとったりすると、「不当労働行為」(労組法7条2号)として、労働委員会からの救済命令や損害賠償請求などの法的リスクを負います。不当労働行為を回避するには、「誠実交渉義務」を果たすことが不可欠です。以下に注意点と交渉術を解説します。

安易な「拒否」ではなく「応諾困難な理由」を具体的に提示する

要求を全て受け入れる義務はありませんが、単なる拒否は不誠実交渉義務違反となる可能性があります。要求に応じられない場合は、応じられない理由を具体的に説明し、証拠や根拠となる資料を提示して組合側の理解を得る努力を尽くしてください。また、全面的に拒否せず対案を提示することも有効です。拒否する正当な理由がある場合も、書面で通知することが推奨されます。

交渉担当者と交渉権限を明確にする

会社側出席者は、実質的な交渉権限を付与された者(交渉事項を理解している役員や管理職など)を選任することが極めて重要です。決済権限のない者が担当者として出席し、「持ち帰って検討する」といった回答を繰り返すことは、不誠実交渉義務違反の典型例であり、不当労働行為と判断されるリスクを高めます。

交渉記録(議事録や書面)を徹底して残す

後日の紛争を防ぐため、話し合われた内容は議事録に記録するなどして徹底的に残すべきです。録音をしない場合は、2名以上で出席し、1名がメモを取ることで記録の正確性を担保できます。組合側が作成した議事録に安易にサインすることは厳禁です。合意に至った事項は、議事録とは別に合意書や労働協約として書面を作成・締結するよう注意してください。

団体交渉の要求が届いたら、まずは弁護士にご相談ください

労働組合等から団体交渉を申し入れられた際、会社側は原則として誠実に対応する義務があり、正当な理由なく拒否することは「不当労働行為」(労働組合法7条2号)として禁止されています。

団体交渉の対応を誤ると、労働委員会からの救済命令や、損害賠償請求を受ける法的リスクがあり、交渉が長期化すれば経営に悪影響が出ます。

団体交渉に応じるべきか、または拒否できる正当な理由があるかの判断には、最新の裁判例など高度な専門知識が求められます。自己判断で安易に拒否することは危険です。まずは弁護士に相談し、適切な初動対応と助言を受けることが重要です。弁護士に依頼することで、不当労働行為を回避し、自社の利益を確保する交渉が可能になります。

Last Updated on 12月 15, 2025 by hayashi-corporatelaw