法人破産するためにはどうしたらいいのか?手続きや費用・期間について弁護士が解説

法人の経営を続けていると、経営がうまくいかなくなったり、資金繰りに苦しんだりすることもあるでしょう。そして残念ながら破産・倒産という選択肢をとらざるを得ないと考える経営者の方もいらっしゃるかと思います。しかしいざ破産するといっても、どのような手順で破産を進めればよいのでしょうか。

今回のコラムでは、法人破産のために必要な手続き、費用、完了までのおおよその期間などの必須知識を林法律事務所代表弁護士 林宗範が解説いたします。

法人破産の手続き

 法人破産手続きの流れは次のようになっています。

①弁護士へ相談

 法人破産を考えている場合は、まずは弁護士への法律相談が必要です。事務所でのヒアリング・依頼を経て、今後の法人破産手続きの進め方や方針について決定していきます。この段階で、破産が良いのか企業再生が良いのか判断していきます。

企業再生を選択するポイントは、債務が一部免除されれば復活できるだけの利益をつくれるかどうかです。債権者側からみても、債務者が破産を選択し、債権回収できないよりは、一部免除してでもある程度の債権を回収できる方が得という判断もありうるところです。

また、事業譲渡を行い、雇用や取引関係を維持しつつ、譲渡後の法人につき破産手続開始の申立てをすることもあり得ます。この場合、事業譲渡に対する正当な対価を支払ってもらうことが重要です。そうでなければ債権者を害する詐害行為になってしまうからです。

上記のような選択肢がとれない場合は、破産を検討していくことになります。

債権者への破産予定通知(受任通知)

 破産の方針が決定したら、債権者への通知を行います。この通知は債権者に破産予定であることを知らせるもので、文書での通知となります。この通知を行うことによって、債権者からの取り立てを止めることができます。ただし、法人破産の場合、個人破産に比べて、所有財産の額・種類・範囲や関係する債権者の範囲が広いので、財産確保・管理や混乱防止の観点から、秘密裡に準備をすることもあります。こういった考慮を要する場合は、受任通知をするか否かやタイミングも考えなければなりません。

③従業員の解雇等の廃業手続き

 受任通知と同時期に行う必要があるのが、廃業に関わる手続きの進行です。業務を停止する、従業員がいる場合は解雇を行う、テナントを借りている場合は立ち退きなどの対応が必要になります。現在取り扱っている業務があったり、給与未払いの従業員がいたりといったトラブルが起こりやすいため、きちんと弁護士に相談のうえで手続きを進める必要があります。

④破産手続開始申し立てに向けた書類の準備

 破産手続開始申し立てをするためには、裁判所へ申立書等の必要書類を提出しなければいけません。必要書類は弁護士が作成できるものと、法人側で作成する書類があります。作成に時間がかかる書類もあるため、時間がかかるものから作成に取り掛かれるよう弁護士がサポートさせていただきます。

⑤裁判所に破産手続開始申し立て

 書類が準備できたら、代理人弁護士が裁判所へ破産手続開始申立書等の書類を提出し、破産の申し立てを行います。申し立てから約2週間程度で裁判所によって「破産手続開始決定」がなされ、裁判所側の破産手続きが開始します。

⑥破産管財人による法人の資産回収・売却

 破産管財人とは、破産手続において、法人の財産管理及び処分をする権利を有する者をいいます。通常は、弁護士が裁判所によって選任されます。この弁護士は破産予定の法人とは無関係の弁護士が選ばれるため、破産手続きを委託している弁護士とは別の弁護士になります。

破産手続開始が決定すると、法人財産の管理権が破産管財人へと移行し、法人の資産が売却・換価回収されます。

⑦債権者集会

 債権者集会とは、債権者に破産の経緯や現在の換価回収の状況などについて報告をする、裁判所で行われる手続きです。1回で終わらなかった場合は、複数回継続して行われることもあります。

⑧債権者への配当・手続きの完了

 破産管財人によって売却された法人財産で、社会保険料や未払い賃金など(財団債権)を支払い、財産が残った場合一般の債権者(破産債権)に配当を行います。財産が残らなかった場合は行われません。

 その後、裁判所によって破産手続きの終了が宣告され、破産の手続きは終了となります。 

法人破産完了までにかかる費用と期間

 これらの多くの段階を踏んで行われる破産手続きですが、これらの手続きを終えるまでの一般的な期間としては、約6か月から1年程度です。

 ただし、それぞれの企業の状況によって期間は異なります。売却が困難な不動産などの資産があるなどの場合は、破産までに1年以上の期間がかかることもあります。

 また、破産手続きにかかる費用は①裁判所に納める費用 ②弁護士への報酬 ③実費となっています。

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  • 裁判所に納める費用

裁判所には破産管財人の手続き実費と報酬に使われる予納金と、破産を官報に掲載するための官報公告費を収める必要があります。自己破産の場合、法人は60万円、個人は40万円が基本です。負債総額が大きくなると、予納金も大きくなります。また、少額予納管財事件であれば約22万円程度で済む場合もあります。(裁判所ごとで異なる場合があります)

  • 弁護士への報酬

 弁護士への報酬に関しては、各法律事務所によって異なりますが、約50万円~100万円程度に設定している事務所が多いです。(負債総額や債権者数に応じて異なります)

  • 実費

 書類の取得費や郵便代金などがこれに当たります。約3万円程度が目安です。そのため、法人破産完了までにかかる費用としては、約80万円~200万円程度を想定しておくと良いでしょう。

 (法人の代表者は連帯保証人となっている可能性が高く、法人破産する場合は代表者個人もあわせて破産する場合が多いです。)

破産事件の費用

当事務所では、下記の価格で破産事件のご依頼を承っております。

着手金
 事業者の自己破産申立

50万円以上
報酬金
 経済的利益300万円以下の場合

経済的利益額の16%
 300万円を超え、800万円以下の場合12%+12万円
 800万円を超え、3000万円以下の場合10%+28万円
 3000万円を超え、3億円以下の場合6%+148万円
 3億円を超える場合4%+748万円

破産以外の方法:企業再生

多くの経営者の方は、破産するしかないと考えて法律相談にいらっしゃいます。しかし、実際に相談をお受けし状況を伺った場合に、破産せず企業再生ができるというケースもあります。

  • 経営者や従業員が企業再生に取り組みたいと思っている
  • ■負債の削減によって資金繰りが正常となる
  • ■債権者がきちんと協力してくれる
  • ■実現可能性の高い改善計画を策定できる

  上記の条件がそろえば、企業再生ができる可能性があります。しかしこの判断は経営者だけではなかなか難しいため、ぜひ法律相談の際にご相談ください。

法人破産でお悩みの方は、当事務所にご相談ください

 この記事では、法人破産の手続きや費用について解説しました。法人破産は一人で思い詰めるべきではありません。また、弁護士などの専門家に相談することで、今後の方針が定まる、破産以外の選択肢が見つかる可能性があるというメリットもあります。

 林法律事務所では、法人破産や企業再生に関するご相談を受け付けております。金融機関での勤務経験を活かし、法人破産、企業再生に関して、最適なアドバイスとサポートをさせていただきます。ぜひ一度お気軽にご相談ください。

Last Updated on 3月 1, 2024 by hayashi-corporatelaw